前夜

アルス「いよいよ明日か……」
 アルス一行は今、リムルダールの町にいた。明日、いよいよゾーマの城へ向かうのである。
 アルスは眠れない夜を宿屋の外で過ごしていた。そこへ……
マリナ「アルス、眠れないの?」
アルス「マリナ……」
 魔法使いのマリナがアルスの所へ駆け寄ってきた。
マリナ「流石に、アルスも不安なのね。明日、ゾーマの城へ向かうから仕方ないわよね」
アルス「うん……」
 アルスは明らかに不安げな表情をしていた。しばらく沈黙が続き……
マリナ「ねぇ、アルス、ガルナの塔での事、覚えてる?」
アルス「ガルナの塔……あの時か。あの時は大変だったよな」
マリナ「お姉ちゃんやリーザと離れ離れになっちゃったもんね」
アルス「モンスターとの戦いで綱から落ちたんだったっけ……」

〜〜〜ガルナの塔に〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

アルス「いってぇ……綱から落とされちまうとは……は、マリナ!」
マリナ「あたしは大丈夫よ、アルス」
 スカイドラゴンとの戦いの最中、アルスとマリナは渡っていた綱から落とされてしまったのである。
アルス「……とにかく下に降りよう。そこで2人と合流できるはずだ」
マリナ「うん、わかったわ」
 2人が下に下りようとしたその時、スカイドラゴンが現れだ。それも3体いた。
アルス「まずい、スカイドラゴンだ」
マリナ「3体もいるわ。4人でかかっても1体倒すのがやっとなのに!」
 2人がその場から逃げようとしたが、スカイドラゴンは取り囲むように逃げ場を塞いだ。
アルス「し……しまった。これでは逃げられない」
マリナ「えー、戦うしかないの?」
アルスは鋼の剣、マリナは毒針を構えた。そして、スカイドラゴンが3体同時に襲い掛かった。
マリナ「ヒャド!」
アルス「てやぁー!」
 マリナの呪文とアルスの剣でなんとか1体倒せたものの、スカイドラゴンの吐く燃えさかる火炎で、2人は窮地にたたされていた。
アルス「ダメだ。何回回復しても埒があかない……」
マリナ「い……一体どうすれば……」
アルス「…………ん、そうだ」
 アルスは何かをひらめいたのか、鋼の剣から刃のブーメランに持ち替えた。
マリナ「アルス、どうしたの?」
アルス「マリナ、刃のブーメランにヒャドを頼む」
マリナ「え……」
アルス「僕に考えがあるんだ。やってくれ」
マリナ「……わかったわ、アルスを信じる。ヒャド!」
 マリナのヒャドの冷気が刃のブーメランを包む。
アルス「そりゃあ!」
 アルスが投げた冷気を纏った刃のブーメランが、2体のスカイドラゴンに当たる。
 すると、スカイドラゴンの身体が忽ち凍り付いていった。
アルス「これを狙ってたんだ。たぁー!」
マリナ「ヒャド!」
 スカイドラゴンが凍り付いたところを、アルスの剣とマリナの呪文で仕留めた。
アルス「僕の思ったとおりだ」
マリナ「え……どういう事?」
アルス「スカイドラゴンは火を吐くだろ。なら氷には弱いんじゃないかな〜と思ったんだ」
マリナ「それにしても……凄い機転の利かせかたね」
アルス「ああ。名付けて、ヒャドスローだな」
マリナ「ぷっ。何それ、まんまじゃない。今までのメラ斬りとかイオ斬りとかと同じじゃない」
アルス「でも、これでもうスカイドラゴンは怖くない。さあ、下へ降りよう」
マリナ「うん、あれ……なんだろこれ……」
アルス「マリナー。何やってんだー」
マリナ「あ、今行くー」
 2人はその後、魔物に何回か襲われながらも下へ降り、商人リーザと僧侶ラナと合流し、ガルナの塔を出た。
 ラナはマリナが塔で偶然見つけた悟りの書で賢者に転職した……。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

アルス「その時だったよな、初めて2人だけで頑張れたのは」
マリナ「アルスのあの機転の利かせ方にはびっくりしちゃった」
 その時、2人の後ろから声がした。
ラナ「あー、やっぱりこんな所にいた」
リーザ「眠れへんからちうて、いつまで起きてんねんつもりや?」
アルス&マリナ「あ……」
 そこにいたのは商人リーザとマリナの姉の賢者ラナであった。
 2人がいないことに気づき、探しに来ていたようだ。
ラナ「といっても、私たちも眠れなかったんだけどね」
リーザ「ウチも、さらさら眠られへんかったわ」
アルス「やっぱり皆同じだったんだね」
マリナ「ここは一つ、アルスに気合を入れてもらいましょ」
アルス「あんまり上手くは言えないけど……明日はいよいよ最後の戦いだね。
皆で力を合わせて、必ず全員で帰ってこよう!」
アルス&マリナ&ラナ&リーザ「おー!」

作者:バッシャーさん