君に似て優しい雨の音

メイフィ視点だった「雨音は子守唄」のイルスヴァージョン。
こちらはイルスが視点のイルスの独白で名前は出てきません、一人称のみです。
メイフィよりも少しシリアスで切ないイルスの心情をどうぞ。

僕は雨が好きじゃない・・・。

でも君は雨が好きだと言っていた・・・僕も好きになれるかな?

君に似て優しい雨の音

「雨好き?」・・・雨の降る日君と一緒にいると必ずする質問。

僕は「好きじゃない」って答えると「なんで?」って言葉が返ってくる。

僕は「外に出られないから」・・・部屋からの景色は変化しないけど、外に出ると変化があって面白い。

その当時の君はあまり納得してくれなかったね。

魔王討伐の旅の途中雨に降られ宿屋で休んでいると、

君は「雨好き?」と変わらない質問を僕にしてきた。

僕は「好きじゃない」とあの時から変わらない答えを君に伝えた。

すると君は「どうして?」って聞いてくるから「剣の特訓が出来ないから」って僕は答える。

まだまだ未熟な僕にとって、一日一日は大切だったからね。

すると君は「私も好きじゃないかな?」と寂しそうな顔で言った。

僕は驚いて「珍しいね」って言うと君は「魔法の特訓ができないから」と僕と同じように外を眺めてた。

君は僕と同じ考えなんだね・・・だから僕は「早く晴れてくれると良いね」って君に言ったんだ、君は小さく頷いてた。

魔王の上の大魔王を倒した僕たちはアレフガルドから出られなくなった。

僕は君に「これからどうしようか?」って聞くと、

君は考える素振りも無く「あなたとなら何処へでも行く」と言ってくれた。

だから僕は秘めた想いを君に告げ・・・それから「結婚しよう」って。

君は嬉しそうな顔をして・・・僕に抱きついて思いっきり泣いてた。

でも「うん・・・」って言ってくれた。それから僕たちは飛び立った・・・誰にも言わず・・・静かな所へ。

今日も雨が降っている。

君は僕に「最近あまり笑わなくなったね」・・・って寂しそうな笑顔で言ってたね。

情けないよね・・・君は「もう良いんだよ」って何度も言ってくれるけど・・・。

だから僕は誓いを立てたんだ・・・君を絶対に守る・・・って。

ボクガ・・・キミヲ・・・マモレナクナルマデ・・・。

「ねぇ雨好き?」僕の隣に立った君が不意に聞いてきた。

僕は「好きじゃないかな?寂しい感じがするし」って・・・どんな顔で僕は君に言ってるのかな?

そしたら君は僕の隣に座ると頭を預け「私は好きかな?」って。僕は「どうして?」って君に聞いた。

君は「あなたと一緒にいられるし、雨の奏でる音は優しくて・・・良く眠れるから」って。

僕は「君がそういうなら・・・僕も好きになれるかな?」って君に向って言った。

君は顔を上げて僕を見た・・・今度はちゃんと笑顔で言えたと思う。

僕も好きになろう・・・君に似て優しい雨の音を・・・。

〜完〜

作者:朱雀王さん

勇者って例え一人だったとしても最後まで気持ちは晴れないんじゃないかな?
ゲーム版だと仲間置き去りで姿を消す・・・って言う展開になる訳だし。
せめて仲間だけでも上界に帰してあげたかったとか、目の前で父親が殺された事とか、
上界に残した母親や祖父の事を最後まで案じ続ける・・・なんて心情が渦巻いているのでは?と思うと泣けてきます。